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第30回三菱カラーオープンプリントテスト結果 各コマ毎の補正ポイント

 

第30回オープンプリントテストにたくさんのご参加をいただきありがとうございました。今回は最高品質グランプリが2年目を迎え、画像に人物以外の被写体を選ぶなど新しい試みにも取り組むなど充実したテストとなりました。

それでは各コマ毎の補正ポイントについてリファレンスプリントを例に詳しく説明していきたいと思います。リファレンスプリント作成時の条件【キー変化率】については前回テストと同様です。この記事の一番下に説明がありますのでご確認ください。

 

●第30回オープンプリントテスト各コマごとの補正ポイント

 

【補正例の見方】

補正例は、ノーリツ製のフルデジタルミニラボ(QSS38型)にてリファレンスプリントを作成した際のものです。内容は「基本的な補正」と「微調整」の2段階に分けて記載しています。

・基本的な補正:

通常のDPサービスであれば、概ね満足できるプリント品質が得られる補正です。ノーリツ製のミニラボであれば、同じ補正は参考になると思います。

・微調整:

最高のプリント品質を得るために行った細かな補正です。個々のミニラボの状態に左右されるため、そのまま適用できるわけではありませんが、行った補正の意図についてかっこ内に説明していますので、参考にしてください。

 

では、実際にリファレンスプリントを作成した時の補正例です。

 

1.アジサイと子供(屋外、標準的なシーン)

アジサイの花を背景に撮影された子供の写真です。人物と草花の2つの被写体を撮影したコマはお店でもよくプリントされていると思います。晴れた屋外での撮影らしくそれぞれの色の発色は良好ですが、コントラストはちょっと高めにみえますね。

ポイントとしては、①子供の顔色とアジサイの色(青色)の色バランス、②「子供の表情にある白とび」や「アジサイの花びらの濃淡」といったコントラストを調節していきます。

 

Dsc_0001

《補正例》

基本的な補正 Y-3 (顔の黄色を取り除く)
C+1 (葉の緑をきれいに)
AC-1 (やや全体のコントラストを低く)
微調整 D+1 (人物の濃度をしっかりと)
SA90 (顔の赤色と背景の青色を一緒に抑える)
AS+3 (シャープ感の強調)

 

実際にプリントしてみると全体的に黄色くコントラストが高めにみえましたので、[Y-][AC-]の補正を入れて黄色を取り除き、コントラストを低くしました。最初に行った[Y-]と組み合わせる色補正には[M+]もしくは[C+]がセオリーですがここでは[C+]を選んでいます。C(シアン)の色は青緑色に例えることができ、その「緑」色が植物の葉をきれいにみせることに役立っています。最後に全体の色の派手さが気になったため、[SA90]にて彩度を少し下げ、[D+]にて濃度を少し上げて全体を梅雨のイメージに合わせた落ち着いた調子にしています。

 

2.スノーボード(雪のシーン、やや逆光)

雪のゲレンデをスノーボードで滑降するかっこいいシーンですが、残念なことに太陽の位置が逆光のため人物の前面に影ができてしまって表情がよくみえません。同様に雪面にも強い影が表れているために全体的にみてコントラストが高いイメージとなっています。

ポイントとしては、①人物の表情がみえること、②雪の柔らかい質感が得られるように、プリントの補正を行います。

 

Dsc_0002

《補正例》

基本的な補正 D-6 (顔の濃度を低くして表情がみえるように)
AC-5 (雪の柔らかい質感が表れるように)
微調整 Y-1 (雪面の黄色みを抑える)
M+1 ([Y-]補正の青みを和らげる)
AS+5 (シャープ感の強調)

 

まず人物の表情がみえるように[D-]補正にて濃度を下げ、[AC-]でコントラストを下げて雪の質感を調節します。補正後、雪がわずかに黄色くみえたので[Y-][M+]の微調整を行いました。このコマのように画面全体の中に「雪」のような無彩色の被写体が多くのスペースを占めている場合、わずかな色補正の差がコマ全体の印象に影響することがあります。このような場合の色補正のコツとしては、雪の影の部分に注目して「わずかに青い」くらいを目安にプリントしてください。「雪」や「白い雲」などの被写体は「青空」の青色がその影の色に混じっており、やや青いくらいが自然な感じに仕上がります。

 

3.お祭り(ホワイトバランス、やや露出アンダー)

古都の町なみを背景に空を見上げる舞妓さんの写真です。夕刻のためか全体にやや暗めで、画面の左側から赤い光に照らされています。 色補正の方向を見定めるために写真の構図をみてますと、背景の町なみはぼやけていて重要な被写体は舞妓さんだけのようです。左側の赤い光については「夕日」あるいは「祭りばやしの提灯」といったシチュエーションが想像されますが、それらは画面の中に写っていないためプリントを仕上げるうえで赤い光をことさら重要視する必要はないでしょう。色カブリは違和感がないように補正で取り除いていくこととします。

ポイントとしては、①舞妓さんの顔色(お化粧)、②画面左側の赤みを取り除くこと に重点をおきます。

 

Dsc_0003

《補正例》

基本的な補正 Y-3 (赤みを取り除く)
C+1 (赤みを取り除く)
D-2 (表情を明るく)
微調整 AC2+6 (キャッチライトを強調)
AS+5 (シャープ感の強調)

 

まず全体の濃度を下げる方向[D-]に補正を行います。全体の濃度を下げて被写体の表情がわかりやすくなったら、肌色やお化粧に注目して[Y-][C+]といった赤みを消す色補正を行いましょう。おしろい、紅(べに)といったお化粧の特徴を明瞭にすることで、より「舞妓さんらしさ」を際立たせることができます。次にこのコマの色補正の難しい所ですが、被写体の左側が赤、右側は青に色カブリしています。補色の関係にある2色を色補正で同時に消すことはできませんので左右それぞれの色にかたよらないように中間をねらい色を微調整してください。色彩豊かな被写体では彩度を強調したくなるものですが、左右の赤と青の差を強調すると逆効果になりますので彩度補正は適切ではありません。また被写体の眼には「キャッチライト」と呼ばれる白い点が入っています。「キャッチライト」は被写体を生き生きとみせる効果がありますので、[オートコントラスト2]の補正にて少し強調させています。

 

4.ピクニック(晴天、やや露出オーバー)

芝生の上で戯れる親子の写真です。服装から夏の晴れた屋外にて撮影されたものと思われます。晴天の写真らしくコントラスト高めですが、全体的な色は黄緑色の方向にかたよっているようにみえました。実際の色補正ですがメインの被写体である親子の補正をまず考えます。その次に、画面上に占める面積が大きく、色の濁りが目立ち易い「芝生」に注目し、それぞれの色補正のバランスをとりながらプリントするようにしました。

ポイントとしては、①親子の顔色、②芝生、が生き生きとした明るいイメージになるように補正を考えていきます。

 

Dsc_0004

《補正例》

基本的な補正 Y-1 (全体の黄緑色を取り除く)
M+1 (全体の黄緑色を取り除く)
D+1 (コントラストを下げて失った濃度を補う)
AC-3(全体のコントラストを低く)
微調整 SA130(彩度を強調)

 

まず全体の黄色を消す方向[Y-]の補正を行い、そのプリントをみながら肌色の赤みを補う[M+]と、高めにみえたコントラストを下げる方向に[AC-]の補正を入れました。 ここでもう一度プリントを確認したところ、晴れの撮影にしてはコマの鮮やかさが不足している(人物の肌色と芝生の色を含むプリント全体の彩度が低い)ことが目立ってきました。そこで彩度の強調[SA130]を追加しています。

 

5.運動会(部分的に影、露出アンダー)

次はお父さんお母さんなら必ず経験するイベント、運動会での子供の写真です。残念ながらこのコマは露出アンダー(露出不足)の失敗写真となってしまいました。撮影した被写体である子供が暗い(木陰に入っていると思われます)のに対し、背景に写された明るい観覧席にカメラの露出が合わせられたためです。 このようなコマの補正はたいへん難しく、満足にプリントできないままお返しすることもありますが、「撮り直しができない」、「他に変わりがない」などのケースではお客様からプリントの救済を求められることも考えられます。ここではできる限り修復する補正を行ってみました。

補正のポイントとしては、①メインの被写体である子供を最重点に修正することを考えます。

 

Dsc_0005

《補正例》

基本的な補正 AC+3(コントラストを上げる)
SA145(露出アンダーが原因で不足した彩度を補う)
Acs-8(シャドウ部のみコントラストを下げて「まだら状の影」を改善)
Y-2 (彩度強調であらわれた人物の黄色を取り除く)
微調整 AC2+10(前面の子供と背後の観客席のコントラストを近づける)
AS-5 (粒状感の緩和)

 

まず補正の方向を決めるために問題点を挙げてみます。私は(1)被写体の子供が露出アンダーでコントラストと発色が悪い、(2)子供にかかる影がまだらで違和感がある(特に右目にかかる影)、(3)日陰でコントラストの低い「子供」と日なたでコントラストの高い「観客席」が共存するバランスの悪さ の3点をみつけました。最初に(1)を改善するためにコントラストと彩度を上げる方向に補正します。但しコントラストを上げると(2)の「まだら状の影」も濃くなってしまうため、シャドウ部にだけコントラストを下げる逆補正[Acs-]を入れてこれを防ぎます。(3)についてはオートコントラスト2を使い、可能な範囲で被写体と背景、それぞれのコントラストの差を近づけてみました。露出不足の画像の彩度を上げると粒状感がみえることがありますが、このコマでもその傾向がみられたためシャープネスを下げてできるだけ目立たないようにしました。

 

6.お弁当(物撮り、標準的なシーン)

メインの被写体が「人」ではない出題はこれが初めてです。ブログやインスタグラムの普及とともに身の回りにある「物」が被写体となることも増えてきましたので取り上げました。お弁当の写真は「美味しそう」にみえることが重要ですが、どうすれば良いのでしょうか?

ポイントは、①各食材の色純度が高い(色カブリが少ない)、②明るい(暗い影の部分が少ない) ことにあります。

 

Dsc_0006

《補正例》

基本的な補正 C+1 (全体の赤みを取り除く)
D-2 (全体に明るく)
微調整 AC2+10(揚げ物、トマトの影を小さく)
AS+5(シャープ感の強調)

 

被写体が人物である場合と異なり、まず基準となる色をみつける事が大切です。このコマでは「チーズ」や「容器」の白い部分を基準にしたところ、全体に少し赤みを帯びているようにみえましたので[C+]の補正を行いました。赤みを消したあとは揚げ物やトマトの影が小さくなるように[オートコントラスト2]で明るく整えています。一般に被写体が食べ物である場合は、影の部分が少ないほうが良好にみえます。コマ全体の濃度も明るく[D-]補正しましたが、明るくなり過ぎないように他のコマのプリントと見比べて濃度の補正量を決めるようにしてください。他にプリントしたコマと見比べるとオーダー全体の色バランスを整えることができ、極端な補正で間違えてしまうことの予防になります。

 


7.チャート(補正不要のデータ)

このコマは、処理液やセットアップ(デイリー)の状態をチェックするために適しています。白、グレー、黒の各パッチの色が極端に偏っていたり、階段状のパターンの濃度変化がスムーズでなかったりすると、プリンター設定が適正ではない可能性があります。

 

Dsc_chrt_2

 

 

【まとめ】

第30回オープンプリントテストでは、前回に引き続いて最高品質グランプリ、準グランプリを選出いたしました。

最高品質グランプリと準グランプリに選ばれたお店は補正が細やかで、精緻な色バランスを追求した 素晴らしいプリントが多く甲乙つけがたいものでした。 千葉大学名誉教授 三宅洋一先生の審査、総評においても色補正は、芝生の緑や、青空、海の色 などメモリーカラーと呼ばれる人の心の中にあるイメージをオペレータの感性によってプリント上に細部まで豊かに再現するものであり、グランプリを受賞されたお店はもちろん、他のお店においてもその意識がよく行き届いているものとして評価されています。

顔認識などカメラの自動制御技術は進歩していますが、それでも撮影の失敗は起こりうるものです。 撮影画像のデータをきれいに整え、鑑賞に適したプリントに仕上げることができるのはコンピュータではなく 日々たくさんのプリントを行って補正の技術を磨き、被写体のイメージをプリント上に表現できるオペレータであることはいうまでもありません。 オープンプリントテストの評価を行う中で、最高品質グランプリの受賞店様はもちろん、テストにご参加いただいたお店様すべてがプリント品質の向上に真摯に取り組んでおられることを強く感じました。参加店様は自店のプリントサービスに自信をもって、お客様にお勧めしていただければと思います。

カラー印画紙とデジタルミニラボは、人の眼がとらえた画像(ハードコピー)を得るために長い年月を経てつくられた最も良いツールです。写真店様のカラープリントサービスに少しでもお役に立てるように、これからも新しいオープンプリントテストに取り組んでまいりたいと思います。

 

2018年5月15日掲載

 

 

【リファレンスプリントのキー変化率】

リファレンスプリント作成時にはキー変化率を小さく変更し、わずかな色濃度の差にも調整(キー補正)を施しています。

 

リファレンスプリント作成時のキー変化率は以下の通り。

  濃度 7.5% (標準設定15%の1/2)

  色  1.9% (標準設定5.8%の1/3)

 

上記のキー補正量はお店でプリントする時のキー補正量と比べて2~3倍の値になりますので、その辺りを考慮しながら記事を読み進めてください。例えばリファレンスで下表左の補正が行われていたプリントを、標準のキー変化率で設定されたミニラボにてプリントする場合には、右のキー補正に相当します。

 

リファレンスの補正    標準のキー補正

濃度キー:[D+2] → [D+1]  

カラーキー:[M-6] → [M-2]

       [C+3] → [C+1]