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第29回三菱カラーオープンプリントテスト結果 各コマ毎の補正ポイント

 

第29回オープンプリントテストにたくさんのご参加をいただきありがとうございました。今回は各コマ毎の補正ポイントについて、どうすればプリントの色が良くなるのか、リファレンスプリントを例に詳しく説明していきたいと思います。

 

まず最初にこのプリントを作成した時のキー変化率についてご説明します。

 

【リファレンスプリントのキー変化率】

オープンプリントテストも回を重ねるごとに写真店様のプリント技術が向上しています。そのため、品質の向上した写真店様のプリントと比べても遜色のない手本となるようにリファレンスプリント作成時にはキー変化率を小さく変更し、わずかな色濃度の差にも調整(キー補正)を施しています。

 

リファレンスプリント作成時のキー変化率は以下の通りです。

  濃度 7.5% (標準設定15%の1/2)

  色  1.9% (標準設定5.8%の1/3)

 

ただし、この時のキー補正量はお店でプリントする時のキー補正量と比べて2~3倍の値になりますので、その辺りを考慮しながら下記の内容を読み進めてください。例えばリファレンスで下表左の補正が行われていたプリントを、標準のキー変化率で設定されたミニラボにてプリントする場合には、右のキー補正に相当します。

 

リファレンスの補正    標準のキー補正

濃度キー:[D+2] → [D+1]  

カラーキー:[M-6] → [M-2]

       [C+3] → [C+1]

 

●第29回オープンプリントテスト各コマごとの補正ポイント

 

【補正例の見方】

補正例は、ノーリツ製のフルデジタルミニラボ(QSS38型)にてリファレンスプリントを作成した際のものです。内容は「基本的な補正」と「微調整」の2段階に分けて記載しています。

・基本的な補正:

通常のDPサービスであれば、概ね満足できるプリント品質が得られる補正です。ノーリツ製のミニラボであれば、同じ補正は参考になると思います。

・微調整:

最高のプリント品質を得るために行った細かな補正です。個々のミニラボの状態に左右されるため、そのまま適用できるわけではありませんが、行った補正の意図についてかっこ内に説明していますので、参考にしてください。

 

では、実際にリファレンスプリントを作成した時の補正例をご紹介しましょう。

 

1.ケーキ作り(屋内、標準的なシーン)

ボウルでケーキ生地をこねている子供の写真です。屋内撮影ですが目立った色カブリもなく概ね標準的なシーンとなっています。ただ顔が影になっているため、顔色について補正が必要です。

補正のポイントとしては、①影になった子供の表情 が目標になりますが、手や腕に明るく白トビしている部分がありますので、可愛らしいしぐさがよくわかるように表情から腕にかけての色濃度のバランスに配慮しています。

 

Dsc_0001

《補正例》

基本的な補正 Y-2 (顔の黄色を取り除く)
D-1 (顔色を少し明るく)
微調整 SA90 (顔の赤色と背景の青色を一緒に抑える)
AS+5 (シャープ感の強調)

 

モニタ画面上ではわかりにくいのですが実際にプリントしてみると顔の部分が赤黄色で濃度も暗くなったため、[Y-][D-]の補正を入れて黄色を取り除き明るくしました。この時、赤色を取る[C+]の補正も試していますがやや行き過ぎ(全体に青くなる)にみえたため[C+]の補正は行わず、替わりにDSA補正にて彩度を下げ、顔の赤色を抑えるようにしています。

 

2.ガーデンウェディング(屋外、標準的なシーン)

庭園にてポーズをとる和装のカップルの写真です。晴れた日の屋外で撮影されており良いプリントの条件は整っています。ただし結婚式の写真では衣装も重要な被写体となりますので、人物の表情以外に着物の色や模様などにも配慮する必要があります。

補正のポイントとしては、①人物の顔色、②着物の色や模様の見映えに重点をおきます。

 

Dsc_0002

《補正例》

基本的な補正 なし
微調整 C+1 (彩度強調後の顔の赤みを抑える)
SA110 (着物をやや鮮やかに)
AS+5 (着物の模様をくっきりと)

 

良い条件が揃っており基本的にほとんど補正の必要がないコマです。このようなコマにおいてひとつ上の色補正をめざす場合は「悪いところを直す」思考ではなく、「良いところをもっとよくする」思考で考えるとまとめ易くなります。例えば、人物の表情や新婦の色打掛(いろうちかけ)などはやや赤みの強い方向が好まれますが、このコマに赤い補正を加えると背景の草木も赤みを帯びて枯れ木のような仕上がり(緑に赤を加えると茶色)になるでしょう。そこで他の方法として彩度に補正を加え、表情は健康的に、草木の緑は鮮やかにしてみました。[C+]は彩度を強調した後の微調整です。

 

3.雨降り(雨天の日なた)

 雨の中、傘を差して歩く子供の写真です。大きな傘と小さな子供の対比が愛らしいシチュエーションで、梅雨のシーズンにはよくみられるカットです。ただ雨の日に撮影されているため、そのままでは全体に青くなったり、軟調(のっぺりとしたメリハリのない調子)に仕上がることが多く、オペレータの色補正による助けが必要となります。

補正のポイントとしては、①人物の顔色、②全体の青みを取り除くこと に重点をおきます。

 

Dsc_0003

《補正例》

基本的な補正 Y+1 (全体の青みを取り除く)
C-1 (全体の青みを取り除く)
D-1 (表情を明るく)
微調整 SA110 (全体の色味をやや鮮やかに)
AS+5 (シャープ感の強調)

 

 まず全体の青みを消す方向[Y+][C-]に補正を行います。全体の青みをかるく消して被写体の表情がわかりやすくなったら、肌色に注目して色補正を行います。傘の影で表情が暗いようならば濃度キーにて調整しましょう。また雨や曇などの天候により露出アンダーの条件で撮影したコマは、彩度が控えめになることがあります。モニター画面でみて効果があるようなら彩度を少し足してみます。

 

4.料理店(異種光源、色カブリ)

 厨房で料理をつくるコックさんの写真です。フラッシュを使用していない屋内撮影であるため、店内の異種光源によるオレンジ色のカブリ傾向がみられます。基本的には人物主体で色補正を考えますが、撮影者の意図が「レストランでの食事」というイベントにあるなら、手前の料理にも少し配慮が必要でしょう。全体のオレンジ色を抑えてきれいに仕上げるためにオペレータによる補正は必ず行ってください。

補正のポイントとしては、①人物の顔色、②料理の盛られた皿など店内の雰囲気、に重点をおきます。

 

Dsc_0004

《補正例》

基本的な補正 Y-6 (全体のオレンジを取り除く)
C+6 (全体のオレンジを取り除く)
D-2 (全体に明るく)
微調整 AC2+10(顔の濃度の改善)
AS+5 (シャープ感の強調)

 

 まず全体のオレンジ色を消す方向[Y-][C+]に補正を行います。全体がオレンジに染まっているため補正量をはかるのが難しいですが、白い調理皿や壁、コック服など基準とする物(物体)の色をもとに補正量を決めていきます。また、下を向いた人物の表情が暗く影となっています。全体のバランスを考えると濃度は[D-2]より下げにくかったため、オートコントラスト2の設定を使って表情の濃度だけを下げる、部分補正を行いました。

 

5.木登り(日陰、露出アンダー)

 大きな木の上に立つ子供の写真です。カメラのホワイトバランスの影響で全体的に青い色カブリの傾向があります。また影の中にある被写体は露出がアンダー寄りとなる事も考えられます。一般にこのようなケースでは軟調で彩度不足のプリントに仕上がることが多くなるのですが、このコマの場合は顔の周囲(あごのライン)に濃い影が落ちているために、部分的なコントラストはむしろ硬調にみえました。その辺りに注意して補正を行ってください。

補正のポイントとしては、①人物の顔色、②全体の青みを取り除くこと に重点をおきます。

 

Dsc_0005

《補正例》

基本的な補正 Y+6 (顔の青みを取り除く)
C-11(顔の青みを取り除く)
微調整 SA120 (不足した彩度を補う)
AC-2(彩度の強調で上がったコントラストを抑える)
AC2+10(顔の周囲、コントラストの改善)
AS+5 (シャープ感の強調)

 

まず全体の青みを消す方向[Y+][C-]に補正を行います。全体が青い色に染まっているため補正量をはかるのが難しいですが、白いトレーナーや樹の幹など基準となる色を探して補正量を決めていきます。色カブリを取り除いた後は、彩度を少し上げて鮮やかさを補っています。但し、彩度強調だけではコントラストも一緒に上昇しますので[AC-2]の補正を入れてこれを抑えました。また顔の影が表情を険しくみせて印象が良くないため、オートコントラスト2の設定を使って顔の周囲の濃度と調子を下げる、部分補正を行いました。

 

6.電車を見送る(色カブリ、周辺減光)

 街中で電車を眺める子供の写真です。やや青い色カブリとコマの四隅に光量の不足らしき濃淡が現れています。 周辺光量の不足は、動く被写体(電車)撮影時のようにシャッタースピードを速め、絞りを大きく開けた場合に起こります。残念ながら色補正では直すことはできませんが、全体のコントラストを少し軟らかくして濃淡を和らげることは可能です。

補正のポイントとしては、①人物の顔色、②全体の青み取り除くこと に重点をおきました。

 

Dsc_0006

《補正例》

基本的な補正 Y+5 (顔の青みを取り除く)
D-3 (全体に明るく)
微調整 AC-3(全体のコントラストを軟らかく)
AS+5(シャープ感の強調)

 

まず全体の青みを消す方向[Y+]に補正を行います。全体が同じ色に染まっているため補正量をはかるのが難しいですが、白いガードレールなど基準となる色を探して補正量を決めます。このコマでは表情が赤くなりすぎるため[C-]は使いませんでした。青みを消したあと[D-]で濃度を整えています。四隅の濃淡は、全体のコントラストを少し下げて目立たないようにしましたが人物が軟調になりすぎないよう注意します。

 


7.チャート(補正不要のデータ)

このコマは、処理液やセットアップ(デイリー)の状態をチェックするために適しています。白、グレー、黒の各パッチの色が極端に偏っていたり、階段状のパターンの濃度変化がスムーズでなかったりすると、プリンター設定が適正ではない可能性があります。

 

Dsc_chrt_2

 

【まとめ】

今回のオープンプリントテストでは最優秀店の中から、最高品質グランプリ、準グランプリを選出いたしました。

審査をされた 千葉大学名誉教授 三宅洋一先生の総評にもありましたようにグランプリ3店の仕上がりでは、2コマ目の婚礼衣装(紋付の黒、色打掛の模様)、6コマ目の子供(髪の毛の質感)のほか、多様なシチュエーションにおけるスキンカラー(肌色)の再現に評価をいただき、他のテストに参加されたお店を含め品質に対する意識の高さを称賛されています。

このように当テストも回を重ねるにつれ、お店のプリント技術の向上を実感していますが、お店から「プリントの色をもっと良くしたいのだけれど、どうしたらいいだろうか?」というお問い合わせを今でも頂戴します。その際にはオープンプリントテストの結果報告書にてキー補正やDSA補正についてご説明させていただくほか、キー変化率を小さくして微妙な色補正を行う方法など、個々にご紹介しています。ただオープンプリントは年1回の実施であるため、詳しい色補正の説明をする機会としてはおのずと限りがありました。

今回の記事にて皆様に、リファレンスプリントはキー変化率を小さくした条件で作成しているという事を紹介しましたが、これはリファレンスを作成する際に用いる、「わずかな色の差にもこだわった補正の考え方」を詳しく知っていただき、日々のプリント作業の中に生かしていただきたいと考えたからです。

今後もお客様の要望に応えられるよう、Graceコミュニティのホームページではミニラボの色補正についての記事を掲載していきますのでご期待ください。

2017年3月23日掲載