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処理量の減少がもたらす影響について

 前回のコラムでは、市場調査の結果から現像レベルに問題を抱えるお店が非常に多くなっている事と、その原因にはフィルム処理量の減少が大きく関わっていることをお伝えしました。
 フィルム処理量の減少が現像レベルに与える影響には2つあり、よく知られている 「現像処理能力の低下による影響(例えば濃度が下がったり、ベースの色が濁ったりなど)」、の他に、「蒸発濃縮による影響(処理液の濃縮によるカラーバランスの崩れ)」も、その影響度は大きい事がわかっています。
 今回は、実際にミニラボでフィルム現像を行っていく中で、これら2つの影響がどのような形で現像レベルに対して現れるのかをご紹介いたします。

●「現像処理能力の低下による影響」

 フィルムの処理本数が減少して補充量が少なくなると、次のような問題が発生します。

発生する問題と原因
① 濃度がつかない
  → 発色現像液の劣化

② ベースの抜けが悪い
  → 発色現像液の劣化もしくは漂白液、定着液の劣化(脱銀不良)

③ フィルムにゴミ、汚れが付く
  → 主に安定液の劣化(汚れ)

 これらの問題は、補充量が少なくなったために起きる各タンク液の劣化(現像処理能力の低下)が直接の原因となっています。

 では、これらの問題を詳しく見てみましょう。

① 濃度がつかない
  発色現像液の劣化(現像能力の低下)が進む事によって、フィルム上の画像濃度がつかない(色が薄くなってしまう)ケースです。

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 下記のグラフは、処理量の少なくなったミニラボで、どのように濃度が変化するかを表したものです。

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 *HDはコントロールストリップの高濃度部、縦軸は濃度、横軸は日数。

 グラフを見ると、処理量が減少した直後ではフィルム濃度は下がらず、一定の期間を経過した後に急に下降している事がわかります。 これは現像能力の低下を防いでいる保恒剤の成分が現像液中から欠乏してその効果が失われ、次いで画像形成に関わる現像主薬成分の劣化が進み始めることによるものです。
 このトラブルの怖いところは、初期にはフィルムの濃度低下が起こらず潜在的に劣化が進行した後に、急変する形で濃度低下を発現するところです。 現像能力の低下した発色現像液で一度処理してしまったフィルムの画像は修復できないため、フィルム現像の業務を行う上で最も注意しなければならないトラブルです。

② ベースの抜けが悪い
 ベースの抜けが悪いとは、現像後のフィルムベース(画像のない素抜けの部分)の濃度が高くなるトラブルの表現としてよく使われますが、その原因には複数のものが考えられます。
 ここでは特に、補充量が少なくなったために起きるトラブルの原因として、発色現像液の劣化が進む事によってベースの濃度が上昇するケースと、漂白液、定着液の劣化により脱銀不良が発生するケースを紹介します。

■発色現像液の劣化が原因の場合
 劣化が進むにつれて、フィルムベースの濃度が少しずつ上昇します。 
(コントロールストリップでは、特にDminのGreen値が上昇し、赤色が強く見えます。)

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 濃度変化が小さいこともあり、実際のプリントに与える影響も他のトラブルに比べて軽微ですが、液が劣化する初期から現れる事が多く、不具合を察知するために役立ちます。
  
■漂白液の劣化が原因の場合(脱銀不良)
 脱銀不良は、その原因となった処理液が漂白液か、定着液かで現象が少し異なります。
 漂白液が原因の場合には、処理したフィルムの画像部分(特に濃度の高い所)に金属光沢のようなものが現れます。 この時、フィルムベース(画像のない素抜けの部分)には特に異常は見られません。

■定着液の劣化が原因の場合(脱銀不良)
 定着液が原因の場合は、処理したフィルム全体にモヤがかかったような状態となります。 

③ フィルムにゴミ、汚れが付く
 フィルムの処理本数が減少して補充量が少なくなると安定液も劣化して、ゴミ(液中の浮遊物)や汚れといったものが多くなり、フィルムに付着するようになります。
 大抵の場合はケミカルフィルターの交換や洗浄で改善しますが、液の劣化が進行するとタンク内でバクテリアや硫化物が大量に発生することがありますので注意が必要です。

●「蒸発濃縮による影響」

 濃度低下などと比べると、蒸発濃縮によるトラブルはこれまで見過ごされがちでしたが、フィルム処理量の減少と共にその影響は増してきており、先の市場調査の結果を見ても多くの店舗にて、その傾向が現れています。

■処理量の減少で濃縮が起こるプロセス
 
これまで、通常のお店であればフィルム現像の依頼は頻繁にあり、蒸発があっても液面はオーバーフロー口までほぼ維持されている状態で補充が行われ、オーバーフローからの廃液はスムーズに流れていました。

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 しかし、フィルム現像の依頼が少なくなると処理と処理の間隔は長くなるため、タンク液の蒸発量は多くなり、タンク内の液面が大きく下がります。(蒸発による濃縮の進行)

 下がった液面には補充液が補われ、オーバーフロー廃液の量は減少します。
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■処理量の濃縮により起こる問題
 上記のプロセスで処理液の濃縮が進むと、次のような問題が発生します。

   発生する問題               原因
 ④プリントの色が悪い        → フィルム現像時のカラーバランスの崩れ

 フィルム現像時のカラーバランスの崩れは、発色現像液の蒸発による濃縮が主な原因となっています。
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 *HD-LDはコントラストを表している。(HDとLDはコントロールストリップの測定値)
  横軸は日数。

 グラフを見ると、濃縮が進むにつれてカラーバランスは崩れていく傾向を確認できます。
(Greenは上昇、Redは横這い、Blueは下降の傾向)

●まとめ

 これまで、経時による処理液の劣化は、毎日一定以上の補充がなされることでカバーされてきました。
 しかし、フィルム処理による補充量が少なくなった現在、経時による処理液の劣化は積極的に対応しなければ防ぐことのできない問題として、その影響を増しつつあります。
またトラブルの中には、最初見えないところで劣化が進行して濃度低下が急に起こる(現像液の劣化)や、フィルムの見た目では変化が分かり難い(濃縮によるカラーバランスの崩れ)等、毎日の作業の中では予測の困難なものもあります。

 「現像したフィルムの見た目に問題はないから大丈夫」 ではなく、月間に処理しているフィルムの量(月間の補充量)やコントロールストリップの測定結果等を用いミニラボのコンディションを把握した上で、個々のお店にとって適切な対応を行うことが、トラブルを防ぐための有効な方法だと考えます。

 次回は、「処理量の減少に対する対応方法 その1」として、お店にあるフィルム現像機(ミニラボ)のコンディションを推測するための目安である、「回転率」 についてご紹介したいと思います。
 引き続き、当コラムを宜しくお願い申し上げます。

2008年7月23日掲載